2012年5月 イスラム教への橋渡し


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アラブのクリスチャン・ビジネスマンのアーメドは、長期休暇の末、仕事に復帰したので不安であった。彼はイスラム教からキリスト教に改宗していたが、友達、家族および同僚には、彼がクリスチャンになるという決断について口外しなかった。アーメドのキリスト教への新しい信仰について、彼らはほとんど理解していなかったので、彼の文化的、社会的、霊的に支持するもの全てに戸惑いを感じた。アーメドは全く別人のように思われたが、実際、彼は未だイスラム教文化の中のアラブ人であった。それは10年前の事だった。今、アーメドはクリスチャンの間では、自分自身の伝統と同胞を誇りにしてる信徒リーダーである。彼は、福音を伝える事に努め、多くのイスラム教徒がイエスと、イエスだけがもたらす事の出来る人生の変革について、学ぶのを助けている。
共通性と相違イスラム教徒は、世界の人口の1/5を占めている。それは、中東に起源をもつ一神教で、ユダヤ教とキリスト教に幾つかの類似点はあるが、イスラム教徒とキリスト教徒、そしてユダヤ教徒の間には、6世紀後半のイスラム教の歴史の初めから、緊迫した関係が続いている。イスラム教徒の大部分は、“西アフリカから中東を通り、
中央アジア、インドネシアにまで及ぶ広大な円弧の形をした領域に住んでいる。イスラム教の過去100年間の成長は速く、1900年には12.3%だったが2010年には22.9%に伸びている” 外国人キリスト教宣教師の10%が、世界中の全てのノンクリスチャンの37%を含むイスラム教徒の中で働いていると推測される。
忠実なイスラム教の教えは、ハガルの間に生まれたアブラハムの最初の子であるイシマエルを通して、アブラハムにまでさかのぼる。イスラム教徒は、神の戒律を遵守する事に関心を持っているが、イエスのアイディンティの本質、つまりイエスの死と復活、そして彼が与えている救いについて、キリスト教と深い神学上の相違を維持している。何世代にも及ぶ誤解、恐れ、懐疑心は続いている。
“中東の最も長期に亘る緊張は、聖地の中心部を通り抜けている。"と、カール・メデアリスは、その著書"イスラム教徒、キリスト教徒、そしてイエス" の中で書いている。メデアリスは、私達の隣人であるイスラム教徒に関して、挑戦的な質問をしている: 「神は他の人々を犠牲にして一人の人を愛しますか?」 私達はどのようにして、そんなにも大きな文化的また神学的な相違を克服して、イエス・キリストが全ての人の真の救い主であると効果的に伝える事が出来ますか? また私達は、明確かつ大胆に、そして誠実に伝えるために、どのように自分自身を備えますか?


運動を奮起させる「イスラム教への使徒」として知られているアメリカの医師、サムエル・ツウィーマー(1867–1952)は、20世紀において、イスラム教徒へのキリスト教宣教に対して、すざましい影響を与えた。若い時に、宣教の働きに人生を捧げるよう召されたツウィーマー博士は、自分で見出す事のできる一番困難な宣教地; イスラム教の祖国であるアラビアを、意図的に求め仕えてきた。彼は、支援を募る事の困難さや中東の当局からの妨害に直面しているにも拘らず、旅をしたり、執筆や講演など、たゆみなく働いた。彼は、キリスト教の働きのために足場を得て、宣教師の新しい運動を奮起させた。1915年に、ツウィーマーは、イングランドのケズック聖会で、ルカ5:5から講演をした。“ シモンが答えて言った。「先生。私たちは、夜通し働きましたが、何一つとれませんでした。でもおことばどおり、網をおろしてみましょう。」”ツウィーマーは、このみ言葉をイスラム教の国々に関連づけました。そして、彼は聴衆に向って、彼らが主の任命に従うなら、やがてイスラム教徒は、舟ーまたは教会ーが満ち溢れたように、大勢の人々がイエス様のもとに来るであろうと語った。彼の話を聞いていた人々はとても感銘を受け、自分たちに何が出来るだろうかと尋ねた。「祈りなさい。」というのがツウィーマーの応えだった。この集会から、the Fellowship of Faith for Muslims (イスラム教徒のための信仰のフェローシップ) と呼ばれる国際的な祈りのミニストリーが始まった。J.クリスティ・ウィルソンJr.は、サムエル・ツウィーマーの生涯を振り返り、「サムエル・ツウイーマーと他の人々が発した挑戦を、今日、再び聞かなければなりません。」と書いた。
なぜなら、今日のイスラム教徒の数は、ツウィーマーが彼らの救いの為に人生を捧げた時よりも更に多くなっている。しかし、彼らを救おうとするクリスチャンの数は、気の毒なほど不十分である。ドアは開かれているが、誰が入るのだろうか?城壁は崩れているが、誰がその街を占領するのだろうか?収穫は多いが、働き手が少ない!
実を結ぶ
イスラム教徒への伝道には、深い理解が必要とされる。しかし、クリスチャンが取る事の出来る第一歩は、よく見落とされる。多くのイスラム教徒は、喜んで信仰に関する事柄について話す。それには、福音や特にイエス・キリストについても含まれている。そのために、クリスチャンは会話を始める機会を持ち、個人的な証しも分かち合ったりする。私達は、イスラム教徒の兄弟姉妹と知り合いになり、そして誠実な友情に発展して行く機会もある。私達は、彼らと共に、または彼らのために祈る特権さえ持つ事もある。私達の役割が、友達、雇用者、家族または宣教師であれ、何か出来る事がある。
このアプローチ方法は、実を結んでいる。オペレーション・ワールドによれば、イスラム教的伝統遺産からキリスト教信者(イスラム教の背景を持つキリスト信者)の数は、特に西アフリカ、インドネシア、そしてアメリカ合衆国で伸びている。これらの信者には、他の背景のクリスチャンとは異なるニーズがあり、彼らへの圧力は厳しく、それは排斥から殉教にまで及んでいる。多くのイスラム教国では、イスラム教文化圏内で改宗してキリストに従う事は不法である。したがって、イスラム教を背景とした信者は、孤立して落胆し易い。信者の群れの成長の必要を満たすために、祈りと弟子訓練が教会の指導者達のために必要とされている。
「あなたがたは、世界の光です。山の上にある町は隠れる事ができません。...このように、あなたがたの光を人々の前で輝かせ、人々があなたがたの良い行ないを見て、天におられるあなたがたの父をあがめるようにしなさい。」(マタイ5:14、16)ツウィーマー、メデアリス、その他の人々によって発せられたイスラム教への働きの召しは挑戦的な事ではあるが、それに伴って励ましもある。「私達が理解できない人々と、恐れを抱かせる未知の宗教に対する愛と憐れみの態度を選ぶ事によって、ただ恐れと疑いが減少していくのを見るだけでなく、橋渡しをし始めるようになる。」とメデアリスは言う。平和の君であるイエスへと導く橋。

祈りましょう。・ 神様が、イスラム教徒の隣人と友達になり、思いやり、福音を分かち合うクリスチャンを起こされますように。
・ クリスチャンがが、イスラム教徒にキリストの愛を明確に、大胆に、そして誠実に語る事が出来るために、自分自身を備え整えるように。
・ 神様が、イスラムの背景を持つクリスチャンの特異な文化的、社会的、霊的な必要を満たして下さるように。
・ イスラムの背景を持つクリスチャンのコミュニティのリーダーシップ、弟子訓練、そして友好のために。

ルアン・アンダーソン 著
スミス照子 訳