2011年8月 インドの「その他後進諸階級」


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インドの何千万人と同様に、ラジェンドラは、ベッドから起き上がり、ハヌマンチャリサという朝の祈りの朗読のために準備をし始めました。
ヒンドゥー教の伝統によれば、猿の神「主ハヌマン」が、彼の主であるヒンドゥー教の神、ラム王と一緒に魔王と戦うと言われていますが、多くのヒンズー教徒は毎日、その猿の神「主ハヌマン」を拝み、自分の身を清め、力が与えられるように祈っています。
ラジェンドラには、一日の過酷な肉体労働のために体力が必要です。祈りを終えた彼は、玄関を出て土ぼこりの道を下り、職場に向かっていくのでした。




世界最大の未伝導民族

インドは世界に無視することのできない存在です。地球上の全人口の六人に一人がインド人です。そのインド人の中に、無視することの出来ない「その他の後進諸階層」という階級の人々がいます。

インドの2001年の国勢調査によると、人口10億2900万人中、81%がヒンドゥー教徒です。その内、上層カーストとダリット(以前、アウト・カーストと呼ばれていた)が、3分の一を占めています。残りは、シュデュラの第四カーストか後進カーストに属しています。
インドの憲法によると、後進カーストには、「指定カースト」と「先住民族」、「その他の後進諸階層」が含まれます。彼らは、1980年のマンダル委員会報告書によれば、インドの人口の52%に昇ります。インドの人口の過半数であり、世界で一番大きなヒンドゥー教の階層となります。

「その他の後進諸階層」、つまりOBC(英訳:Other Backward Classes)の名称は法律上だけの階級に過ぎません。現実には、人々の階級は、現代の職業に関わらず、ジャティ、つまり家系の伝統的な職業カーストによって区別されています。OBCは、 大体2500のジャティ
で構成されています。その大多数は、「牛の帯」と呼ばれているインドの北部に住んでいます。OBCの殆どのジャティは、肉体労働者や芸術家です。陶芸家から金職人まで、農家(最大の単一グループ)も、酪農家なども含んでいます。下級階層のダリットと共に、OBCは、酷い抑圧や差別を受けています。

救世主を待ち望む
多くのジャティ、特にヤダヴやジャットと言うグループは、ヒンドゥー教の多くの「大いなる伝統」を守っています。ヴィシュヌとラム、クリシュナなどと呼ばれている様々な神々を拝んでいます。
しかし、殆どのOBCのグループは、そのジャティの独特の「小さい伝統」によって生きています。地元の村の神に加えて、独自のクルデヴタ、つまり家系の神も信じています。彼らは伝統的にヒンドゥー教のシヴァ神、またはマハデヴと呼ばれている全能の神の事も信じています。
インドのほとんどのOBCの「小さな伝統」の中に、バリラジャ伝説という犠牲となった王様の物語が語り継がれています。この王様は、慈しみ深い、臣民に愛されている良い支配者として描かれています。その伝説によると、バリラジャは、バラモン(ヴィシュヌの化身)にだまされて、冥界に追放されました。年に一度だけ、彼はその臣民に訪問することが許されています。ある意味、OBCはその抑圧から救って下さる救世主のような存在を求めています。

西洋からのキリスト教宣教の影響を受けた、社会改革家マハトマ・ジョティラオ・フーレ(1827~1890)は、鋭い分析を行い、インドやヒンドゥー教、バラモン社会を批判しました。彼は、儀式的な装飾と共にカースト制度は、「刑務所」であり、ヒンドゥー教の最高上級カーストのバラモン人は、刑務所の看守であると指摘しました。フーレは初めてバリラジャとイエスを比べました。フーレはこの様に書き残しています。「圧政に苦しむ人のために、一人の偉大な英雄、聖なる聖人、偉大な大賢人、真実を愛する者、バリラジャがこの世界にやって来ました。彼は真理を知ることは、すべての人に共有されるべきものだと強調しました。そして、奴隷の束縛によって苦しんでいる、貧しい虐げられた兄弟たちの解放を手助けしました。彼は、地上で神の王国を確立するために努力しました。」
フーレは、こう続けています。「バリラジャ、つまりイエスキリストの信者であるアメリカとスコットランドの宣教師たちがこの国に来ました。彼らは、その真実の教えを説きました。その宣教師は、低カーストの首から奴隷の束縛を取り外しました。」

OBCに仕える
スニル・サダーは、OBCに意図的に仕える最初のクリスチャンと認められています。ダリットのカースト出身の彼は、フーレの教えによって大きく影響を受け、デリー市に来て、国際真理追求者(TSI)という団体を設立しました。
すべての人は神さまのイメージによって創られた理念を元に、TSIは、政治の舞台での活躍やカースト制度から脱出を目的に、後進カーストの人々を助けています。TSIのアウトリーチ大会の独特な部分は、TSIの指導者がダリットやOBCの参加者の足を洗うことです。この足を洗う奉仕よって、人の心が福音を聞くために柔らかくされ整えられます。あるケースでは、TSIの奉仕の結果として、ウッタルプラデーシュ州の羊飼いのジャティの全員が、良い羊飼いに付いて行くようになりました。


1980年代以来、インド政府の教育や雇用の肯定的な行動計画の確立によって、OBCは、積極的に志を持つようになりました。その願望の達成には英語力が必要です。そのために、この志を抱いている人を支える目的で、2009年にインドの唯一の英語/ヒンディー語のバイリンガル雑誌、「フォワードプレス」の出版が始まりました。聖書の世界観が組み込まれた家族全員のための雑誌です。聖書の原則を教えながら、低カーストの人々の声となりました。

OBCはインドの政治界においても重要な存在ですが、これからも社会的に、経済的に、彼らの歩みは長い道のりです。しかし、この旅を通して、「最後の人が最初になる」という原則を学ぶことができるでしょう。

祈りましょう。
・ 収穫の主が弟子たちの目を開いて、OBCの畑に労働者を遣わすように。
・ 聖霊と御言葉によって福音が妥協されないように。
・ 聖霊の風によって、ジャティが救世主を求めるように。
・ 教会がカースト制動から離れまるように。


イヴァン・コストカ著
ジェフ&綾リンスコット翻訳