2011年5月 ポマクへの伝道



ガリーナは正午にカフェに着き、二人の男性に迎えられました。彼女は二週間ほど前に、カフェのオーナーのブルガリア人クリスチャンから仕事を紹介されたのです。 この場所は故郷の村、イスラム教徒の家族からは遠く離れていますが、例え少量でもアルバイトでお金が稼げる事を感謝していました。 彼女の父親は百姓として農作業を一生懸命続けていましたし、母親は織物を織って働いていましたが、年々なんとか生活出来るくらいのお金しか得られませんでした。 彼女は微笑みながらお客のために紅茶を注いでまわりました。

ユニークなアイデンティティ
南ブルガリアのロドピ山脈は世界一美しい場所の一つです。 厳然と雪を頂く、人里離れたその地がポマクの人々の故郷なのです。約30万人のポマク人が南ブルガリアに、それ以上の数のポマク人がギリシア、マケドニア、トルコに住んでいます。 ヨーロッパ人でありながらイスラム教徒である彼らはユニークな存在です。15世紀から始まったトルコの東欧への侵入により、剣により強迫的に改宗させられた歴史があるのです。 今日、ポマクは東方正教会が大部分を占める海に浮かぶイスラム教の島です。ブルガリア人であり、ブルガリアの言葉を話す、マホメットに従う追従者達です。しかし多くは名ばかりのイスラム教徒で、僅かのコーランを読んだり、その教えを実践する人たちはごく少数です。
ポマク人は多くの古いブルガリアの伝統を大切に守っています。祭りの時は女性はフォークソングを踊り、歌い、色とりどりの民族衣装を着ます。男性はバグパイプなどの伝統的なブルガリアの楽器を演奏します。結婚式や他の式典では、イスラム教とキリスト教の混合した伝統的習慣を守っています。
そんな彼らは、周囲からは明確なアイデンティティを持たない民族です。ブルガリア人である彼らを、イスラム教徒の隣人、トルコ人も、同国のクリスチャン、ブルガリア人も無視します。ポマク人の貧困と失業率は、他のブルガリア人がすでに直面している現状よりはるかに酷く、売春と社会状況の崩壊は大きな問題です。

人々に福音を伝える
ポマク人教会は存在しないのですが、ブルガリア人の福音派の教会に通う一握りのポマク人の信者が確認されています。彼らに対する直接的な伝道はほとんどされていません。では私達はどうしたら彼らに直接的に働きかけられるのでしょうか? 従来のような宣教師を訓練し、送る方法は非常に費用もかかりますし、効果があまりありません。 彼らの隣人であるブルガリア人のクリスチャンを建て上げて、彼らに働きかけるほうがはるかに合理的です。
過去12年間、私達の組織はビジネスを通して伝道の機会を生かし、主にイスラム教国の25以上の国々の中で努めてきました。私達は、クリスチャンのビジネスマンと繋がり、ビジネスのための神のご計画や、聖書の真理などを教え、指導します。また、未伝道地域において「神の御国」を築くための開業やビジネス拡大のための資金援助も行っています。
プログラムを修了したビジネスマンたちは、彼らの地域教会の設立や、様々な活動のために、惜しみなく捧げる者となっています。これらの活動は外国人宣教師が行うよりもはるかに効果的です。 ある修了生は未伝道の町や村でビジネスを始めました。ビジネスの関係を通じて自然に彼らは、福音を述べ、語り合うことができます。その結果、地域の人々が信仰の道に入り、新しい教会が興されるのです。 これは、まさに私達が信じているブルガリアとポマクの人々に働く神の御業なのです。
私達の組織は、2009年にその領域を拡大するように導かれました。2010年の前半には、ポマク人に手を差し伸べ、「御国のビジネス」を地域のブルガリア人教会にも広げる事を目的とした働きに着手しました。 私達の狙いとしては、ポマク人のための伝道に重荷を抱いている、クリスチャンたちとの関係を構築することです。

新しいタイプの宣教師
スベタは、ブラゴエフグラートで中古の衣料品店を始めた元教師です。彼女とは、ビジネスをその地域の伝道に役立てようとの考えを分かち合いました。初めは懐疑的であった彼女ですが、私達の目的を理解し始め、ますます深く関心を持つようになりました。 彼女のキリストへの献身さと恐れを知らない性格は福音伝道にはもってこいです。
グリシャはブラゴエフグラートから約50マイル離れている、ポマク人が多く居住する町で、小さいホテルと会議センターを所有している、初老の信者です。町のカフェで昼食をとった後に、グリシャと私達の小さいグループは町のショッピングセンターに散歩に行きました。その途中、グリシャは商店や、通りすがりの夫婦、学生たちのために立ち止まり、祈りました。彼女の心は、私を大いに勇気づけました。彼女も、神の目的のために自分のビジネスを利用するため、更に学びたいと願っています。
エリッサは南ブルガリアの遠く離れた町に住んでいます。 彼女は高度の教育を受け、知的で若い卒業間近の法科の学生です。 彼女はビジネス界に入るか、弁護士を開業するかの結論を出していませんが、イエスが彼女を用いたいと望んでおられる場所ならば何処にでも行きたいとの確信を持っています。
時として、私達のビジョンに賛同しない人々に出会います。 私達はニコライと言う事業主と夕食を摂りました。 私達がポマク人への宣教の方法として、ビジネスの活用の話をしたのですが、彼は、一応は聴いてはいましたが、話をそらしてしまいました。彼はビジネスマンとして、贈収賄が氾濫するブルガリアのビジネス界に失望しきっていると言いました。私達は、彼を勇気付けるために共に祈りました。
私達はビジネス戦略を駆使して、ポマク人に神の福音を広めるために、スベタ、グリシャ、エリッサのような人々を訓練することが出来ます。 このユニークな民族のための神のご計画がまだ全うされてはいませんが、神がそれを完成させるためにブルガリアで働く神への奉仕者を大いに用いて下さると信じます。

祈りましょう。
・ポマク人への福音伝道のために神が多くのブルガリアのクリスチャンたちを立ち上がらせて下さるように
・ビジネスに関して賜物を持っているクリスチャンが、ポマク人に神の御国を広げるために訓練を受け、働きを始められるように
・霊的、ビジネスの両面において指導的立場に立てる強い指導者が与えられるように
・キリストがご自身の教会をポマク人の社会に建てられるように

マイケル・R・ベヤー著
梶木 明一 翻訳