2011年3月 ペルー政府


アンセルモはアンデス山腹で生まれ住んできました。 彼の故郷の地下深く埋もれた鉱脈。彼の一族は長年、ここで差別的政策により自由と健康を奪われて来たのです。 彼の兄は不当政策に抗議する鉱夫達のデモに参加し、彼の目前で警官に射殺されました。あれから20年、ほぼ何も変わっていません。しかしアンセルモは 子供達,孫達がいつの日か平等な権利を与えられる事を 今も夢見るのでした。

政治と不平等
次回のペルーの大統領選挙は2011年4月に行われます。 ペルー国民の大半は 私腹を肥やす政治家と腐敗政治に不信を抱いています。政府が大々的に宣言する経済変革にも拘らず、貧困、無知、差別が溢れ、非差別民には機会が与えられていません。これは特に山岳地域やジャングルの僻地において著しいのです。 生活にくるしむ国民の日々の現実は経済指数から察する事は出来ません。多くの人は満員のおんぼろバスに詰め込まれ町に働きに出、地方の自治体では衛生条件さえも整っていません。過去10年間に改善されたのは政府の設備のみで、何百万ものペルー国民が平等な条件と未来への希望を与えられていないままです。ペルー政府を考えるにあたり、その社会が不平等に基づいていることを考慮に入れなければなりません。ペルー共和国成立の基点に、先住民への蔑視と外国憧憬がすでにありました。この国の歴史は貧困と差別への憤懣に満ち、その結果がテロと政治腐敗として現れています。貧困にさいなまれた者達は欲しい物を力ずくで手に入れるという現実が依然としてあるのです。
不正はペルー内政にも現れ、少数の特権階級が他の者を差別し搾取する構造になっており、 国民は選挙により政府を運営するように教育されていません。従って、ペルーの政治は、当選した代表者が公約をすっぽかす『えせ民主主義』と、暴力、軍事クーデター、革命挫折を繰り返し重ねて来ました。

道徳的基盤
人口の約94%がクリスチャンを名乗る国で何故このような不平等が続くのでしょうか。障害のひとつは教会の不一致にあります。多くの南米国家に異ならず、多くの者はイエスを社会主義の革命家ととらえています。長年、教会は社会の不平等に解決策を与えずに来ました。教会はその歴史的社会的役割を見失い、ペルーの信者達は社会問題に対処する実際的教えを与えられていません。
2007年の国民調査では、人口の12.5%が福音派、81.3%がカトリックと答えています。名ばかりのクリスチャンの割合は不明です。信仰集団としての教会は、信仰者たちが互いに認め合える聖書の道徳的基盤をまとめる必要があります。社会学者達はペルーが分裂していると診断しているが、 社会学や政治、経済政策では過去の分断や不正を赦し、忘れ、それらを乗り越えて手をつなぎ合う事は出来ません。イエスキリストの十字架による行いと、聖書による公正な社会的法律(出エジプト記20:1-17)のみにより、ペルーの政治問題の根本をただす事が出来るのです。

聖書にもとづいた政治
統一した道徳的基盤を打ち出すのと同時に、教会は全ての市民の政治的経済的権利を認める聖書規範に基づいた政治のために戦わねばなりません。全ての国民に政策決定や政治参加への実際的な道が開かれ、市民全てに不動産所有や起業活動への参加が許されねばなりません。これ等は、国民が大企業の単なる歯車と見られ、 非人道的扱いに尊厳を傷つけられている現在の政治に代わり、全てが参加できる社会を築くために不可欠なものです。
ペルーの国民のほとんどは、 社会の不正のため得られない教育、医療、仕事、食料品までをも、国が供給すべきだと考えています。資本主義の産む不平等に対し近年考えだされたこのような親方政府のあり方は貧困や資本主義の悪を変える事は出来ない。又、最近の世界的経済危機に見られたように、長期持続できるものでもないのです。
近年ペルーにおいて様々な試みが考案され、 教会の働きが産んだ新たな考え方が前進への意欲を産んでいます。 多くのペルー国民が最低賃金しか受け取っておらず、 未だに不公平な労働条件に甘んじているのが現実です。多くは差別を受け、人権,市民権を蹂躙されています。この現実に対し、事情に精通し,熟練した教会が地の塩、光として行動せねばなりません(マタイ5:13-14)。 教会は神のために政治の領分を取り戻し、ペルーの指導力とならねばなりません。国々の創造者の心を持った指導者たちとして。

祈りましょう。
・ 信者たちが真実と神の民として権限をもってペルーの民を神のビジョンに導く事が出来ますように
・ 長年ないがしろにされて来たペルーの先住民たちの尊厳が認められ、前進する機会を与えられますように
・ 信者達がペルー社会において責任のある地位を占めるための教育を与える聖書教師達が多く現れますように
・ 教会が聖書における政府のあり方を理解し取り入れますように
・ 神が教会の上に一致の精神をもたらし、不平等な人間主義的な政治姿勢に対決する事が出来ますように

アナ・ロンカル・ビラヌエバ著
渡邊 美樹子 翻訳