2011年12月 マレーシアの移住者

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ハノイにある代理店は、ランに洋服店で働くようになるだろうと話していましたが、嘘でした。ランは新しい上司の中国人女性より空港からの車中、2つの白い薬を貰い、忙しい仕事が始まるので飲んで寝るとよく休めると言われました。ランが目を覚ました時、ベッドとトイレしかない部屋に1人でいました。パスポート・金銭・宝石類、全ての持ち物が取り上げられていました。始めに彼女の部屋に来たのはランと寝る為に大金を払って来たと言う男性でした。ランが拒否すると、別の男性が来ました。彼女はやって来る男性達と上司に力の限り抵抗しましたが、彼女の体も奪われてしまいました。逃げることの出来ない悪夢の中、うとうと起きる日々でした。

移住者の行き着くところ
マレーシアには移住文化の長い歴史があります。マレーシアに辿りついた経緯は個々違いますが、マレーシア人口の大部分を移住者が占めています。今日では、人口の50%にあたる2600万人がマレー人、中国人24%、インド人7%、その他の国8%、そして残り11%にあたる人のみが現地人です。
マレーシア人ではない多くの人にとっては、チャンスの国です。アジア中から何千もの外国人労働許可証を持った人が、高い賃金にひかれ毎年マレーシアに辿り着きます。1970年代後半より、マレーシアは外国人労働者に依存するようになり、今では200万人以上の外国人労働者を迎え入れています。彼らは、インドネシア、バングラディシュ、タイ、フィリピン、ネパール、ミャンマー、ベトナム、パキスタン、アフリカ諸国からの男性、女性、子供達です。人口の4人に1人は外国人です。

利用される移住者
多くの移住者が合法的契約によりマレーシアに来る一方、他の多くはそれほど幸運ではありません。外国人労働者は、しばしばマレーシア企業や個人に外国人労働者を提供している外部業者を通して、祖国で働く条件をもとに契約をします。これらの斡旋業者は、外国人労働者の住宅や個人の権利の保護等気にかけてくれる良い業者です。しかし、悪い業者もあり、賃金の不払い、契約違反等の労働違反を犯す代行業者も存在します。更に酷い業者は、故意に違法労働やセックス産業に労働者を取引する不法な者までいます。
最近のホープ出版物「ディスアポインテッド」の記事に“よりよい国を求めた移民と避難民”の題で、移民は特に利用されやすい立場であると掲載しています。移民の中には低賃金の人、不公平な賃金を支払われている人、勝手に給与が差し引かれている人がいます。また労働災害補償の無い人もいれば、全く給与が支払われない人もいます。もし、彼らが不服だとするならば、雇用主に外国人労働許可証を抹消され、正当な書類を失いかねません。正式な就労書類がなければ、彼らは逮捕・拘留そして国外追放となるのです。
マレーシア中において、これらは日常茶飯事です。労働許可証を失い、そして法律制度を通し起訴しようとする者は、毎月、一時的に合法的な滞在を認める特別な許可証発行の為、およそ3千円を支払うことが要求されます。彼らは、雇用主からの正当な給与支払いを求める法的手続きがなされるのに十分な期間、国に留まる費用さえ負担出来ず、その結果、殆どは訴訟が終結する事なく故郷に強制送還されます。
正式書類が無い為に捕らえられた外国人は、マレーシアにある13箇所の移民拘置所の1つへ送られます。拘置所内は過密で、不十分な食事に水、極端に限られた医療の中、身体及び言葉の虐待もあります。14日間の拘留後、不法入国者とみなされたこれらの移住者は、釈放もしくは投獄されます。2002年に政府が出入国管理を厳しくし処罰する方針を示したので、何千人もの不法滞在者は鞭打ちの刑になりました。
不法滞在者とされた移住者は、更にマレーシアから追放される時弱い立場におかれます。特にタイとマレーシア国境では、多くの移住者は意に反して人身売買斡旋業者の手に渡ります。一般的に、人身売買斡旋業者は、個人の手が届かない金額を要求するので、お金を工面する為に家族又はマレーシアの友人に電話をかけなければなりません。保釈料金を支払うことが出来ない男性は、海上漁船の仕事にしばしば売られ、女性は、タイでブームのセックス産業で強制労働又は売春の為に売られます。2009年この問題の対応策としてマレーシア政府は、国境でのグループ追放を止めましたが個人の人身売買はまだ行われています。

マレーシアのカイロスの時
マレーシアにおける外国人労働者の現実は厳しいですが、多くの人にとってマレーシアは希望の国のままです。国には200万人の合法的な移住者を越えた100~200万人もの不法就労者がいます。そのほとんどはチャンスとより良い生活を求めているのです。労働者が酷使される中、マレーシアの教会は社会的・精神的変化における重要な役割を担える可能性を持っているのです。
マレーシアの移住者には、ベトナム、ネパール、バングラデシュ、インドネシアとミャンマーのような国から、少なくとも30の未伝道地からの人がいます。これらの労働者は、まだ福音を聞いていない社会を代表しています。マレーシアの教会は前例のない,チャンスの出発点に置かれているのです。マレーシアに来た外国人労働者は、得た富と共に故郷の国に戻りますが、多くの人は恐怖と貧困と酷使されたまま帰途に着きます。もしこの様な人が癒され、豊かにされ、神の愛で満たされて帰国するならどうでしょう? マレーシアと周辺諸国は変わるとは思いませんか?

祈りましょう。
・ クリスチャンが孤立し孤独で不当な待遇を受けている移住者と友達になれるように
・ マレーシア政府が地元NGOとクリスチャンと、移住者の権利が支えられるよう、公平で透明性のある司法制度を設立出来るように
・ クリスチャンが1つとなり戦略的・効果的に移住者に対応出来るように


アンドリュー・クーマン著
山根 直美 翻訳